最後の答え

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 俺はケーキの隣に、小さい箱を置いた。中には小さいダイヤの付いたネックレスがある。 「恋夏、言ってたよな。安くていいからネックレスが欲しいって。誕生日にあげる約束してた。高くはないけど、普段遣いが出来そうなのを選んだよ。 それと、最初の手紙に『最初と最後が大事』って書いてあった。最初は恋夏と俺の関係が最後になるのかと思ったんだけど、最後の手紙で気づいた。 全部の手紙の一文字目だけ抜き出すと『これからも』で、最後の文字だけ抜き出すと『よろしくね』になる。恋夏はまだ俺とやり直そうと思ってくれてたんじゃないかって」  顔をあげると、恋夏の目からは涙が溢れていた。 「そこまで気づいてくれたんだね。私、あの時の悠馬の言葉で傷ついた。だけど20年の絆は簡単に切れなくて。だから、悠馬に私とちゃんと向き合ってほしかった。私の思いは全部伝わったよ。けど……」    許してもらえた、と思った矢先。『けど』?   「すぐに元通りにはなれないよ。だから、これはまだ受け取れない。幼馴染として、あの家をシェアしなから過ごそう。1年後、気持ちが変わらなかったらこれをまたプレゼントして。私の気持ちも変わらなければ受け取る。でもどちらかが心変わりしたらあの家は出よう」  これが恋夏の落とし所なんだろう。俺は受け入れるしか無かった。手を差し出すと恋夏は俺の手を握ってくれた。 「これからもよろしくな」 「これからもよろしくね」  あれから、前と変わらない日常を過ごしている。だけど、以前みたく全てを任せるのではなく、家事も分担して少しずつやるようにしている。 「あの手紙のメッセージよく気づいたね。これからもよろしく、って」  あの後恋夏に言われて、俺は財布からリアル脱出ゲームのチケットを出した。恋夏と行くはずが俺が仕事でドタキャンしたのだ。 「文章に少し違和感あるなと思って。最近恋夏が謎解きにハマってるの思い出したんだ」  それを聞いて恋夏は苦笑いした。 「そっか、解くのは好きだけど、作るのは難しいんだよね」 「今度こそ行こうよ、脱出ゲーム」  恋夏は嬉しそうに頷いてくれた。俺は1年後までこの笑顔を守っていきたい、心からそう思った。
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