0人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日、全人類に対して神様が語り掛けた。
「今年のエイプリルフールで、一番最初に嘘をついた者の嘘を真実に変えてやろう。フランスが4月1日を迎えたとき…その瞬間だ。」
今までにない出来事且つ最大のチャンスに胸躍らせる者、嘘と言い張る者、反応は様々だった。とはいえ、万が一…いや、億が一にもこれが本当だったとしたら…!皆その考えが離れず、自身にとって最大の幸福が訪れる願いを考え、エイプリルフールを待った。
そして迎えた3月31日。何度もテレビやラジオ、SNSで嘘だなんだと呼びかけられたものの、誰もがその瞬間を待ち望んだ。
人生で一番長い一日も終盤、ついにその瞬間が訪れる。
「この宝くじは一等じゃない!!」
「あの子は俺と付き合わない!!」
「あいつは生きる!!」
「私は魔法を使えない!!」
深夜であるにもかかわらず、そこら中で叫び声が響き渡った。
朝を迎えると世界中が愉快なことになった。そこら中で飛び交う怒号や落胆の声。銀行には建物からあふれんばかりの人が訪れ、何を思ったのか全裸で駆け回る人もちらほら見られた。大方、「認識される」だの「姿を消す能力がない」とか嘘をつき、試したのだろう。
それから一週間ほどが経つと次第に熱も冷め、「今年の4月1日は例年より多くの逮捕者を出した」という現実だけが残り、結局「神の声」はただの悪戯という結論が出された。
-4月9日 23時59分
残り1分…僕は瞬きも忘れ、携帯の画面を凝視していた。おおよそは大丈夫なはずだが、警戒するに越したことはない。そして待ちに待った瞬間が訪れる。
「死んでも…あの子に会いたくない…!」
そう口にした瞬間、目の前が光に包まれた。
気が付くと淡い色に包まれた空間に立っていた。周りを見渡すと懐かしい姿が遠くに見える。僕は二度願いが叶っていたということすら忘れ、一目散に駆け出した。
…そうだ、これだけは忘れずに言っておこう。
「神様、僕は感謝しません。」
最初のコメントを投稿しよう!