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1年間はあっという間に過ぎた。
そして、健の大学受験と今年の華苑音楽学校の試験が始まった。
星彩はまだ受けられないが、1年間共にレッスンに励んできた仲間たちを応援するために、先生と共にサポートに入り、万全の体制で力を発揮できるよう、協力した。
一次試験は東京会場の応援に行ったが、二次からは大阪会場だけになる。
「お母さん、大阪に応援に行っても良いかな。」
「お母さんたちは付いて行けないから、講師の先生に聞いてみるね。
邪魔になったり、余計な負担をかけるようなら遠慮しないといけないから。」
「そうだね。お願いします。」
スクールの大阪校の代表をしている同期に電話をした。
「もしもし、あーちゃん、ひかるです。
いつも娘の星彩がお世話になってます。
今年も勝負の時が来たね。
合格者がひとりでも多く出ること、
私も祈ってる。
ところで、星彩が、一緒に受験クラスで頑張ってきた仲間を応援に大阪に行っても良いか聞かれたんだけど、
私は付いていけないし、ひとりで行かせることになるんだけど、お邪魔じゃないかな?
面倒かけるようなら、遠慮させるんで、どうだろ?」
「来てもらうのは構わないんだけど、ひとりで来られる?
受験生の世話で手一杯だから、完全に世話役に回ってもらうことになるけど、それでも良ければ、会場に慣れておくのも悪くはないから、それだけね。」
「わかった。
相談して、また、連絡するね。
ありがとう。」
「星彩、大阪校の代表をしてる同期に聞いたんだけど、来るのは構わないって。
ただ、もし行くんであれば、
完全に受験生の世話役、
裏方と言うことを忘れないで。
遊び半分というか、お客様気分が少しでもあるなら、
邪魔になるから遠慮した方がいい。
それと、自分一人で付き添い無しで行けるかどうかね。」
「うん、分かってる。
私、夏季特別講習で友だちになった石山一枝さん、覚えてる?
彼女の応援に行きたいの。」
「あぁ、うちに3日泊まって一緒に練習してた、彼女?」
「高校1年生だから、
3歳年上なんだけど、
お姉さんみたいに気があって、
とても仲良しになったの。
あれから、lineで情報交換したり、zoomで話したりずっと交流してたの。
一次試験突破したって連絡来たから、励ましに行きたい。
ひとりで遠出するのは初めてだけど、頑張って行ってみる。」
「そうか、石山さんは普段は受験スクールに行ってないんだね。」
「そう。地元の普通のバレエ教室と
ピアノの先生にお願いして声楽をみてもらってるけど、地方だから、
長い休みの特別講習特別しか参加できないんだよね。
仲間がいなくて心細い思いをしてるかもしれないから、励ましに行ってくる。」
「そうだね。
それも、社会勉強のひとつだね。
行っておいで。」
「ありがとう。お母さん。」
こうして、星彩は、ひとりで大阪に行くことになった。
石山に
「一枝さん、一次試験突破おめでとう!
大阪に応援に行くから、向こうで会おうね。」とlineした。
石山一枝もひとりで来阪するというので、
ふたりでツインの部屋を取って泊まることにした。
「一枝さ~ん、お久しぶりです。」
「星彩ちゃん、来てくれてありがとう。
心強いよ~。それと、夏の講習では、お世話になりました。」
「無理にうちに泊まらせちゃって、
スミマセン。
せっかくホテル取ってたのに。」
「ううん、キャンセル料もかからなかったし、宿泊代も浮いて楽しくレッスン出来たし、感謝、です。
ひとりで参加したから、不安だったんだよね。周りの人のレベルも分からないし。ただ、どうしても華苑を受験したかったから、勇気出して行ったんだけど。
星彩ちゃんが声をかけてくれて、クラシックバレエと受験のための華苑独特のバレエの違いとか教えてくれたじゃない?
あれ、凄く助かった。」
「私も、始めあれに凄く戸惑ったから、きっとそうだろうと思ったんで。バレエのレッスンの時の場所が近かったし。」
「おばあちゃんも元気にしてる?
ご飯美味しかったな~。」
「元気にしてるよ。一枝さんの応援に行くっていったら、頑張ってねって。そうだ、これ渡さなきゃ。
はい。
これがおばあちゃんから。
でこれがうちの母から。
それと、園田の叔母さんから。
メッセージカード
好きな煮物を持たせたかったけど、
試験前だからって。」
それぞれ、短くはあるが思いのこもったメッセージが書かれていた。
「星彩ちゃんありがとう。
百人の味方が出来た気分。
じゃ、集合場所に行こうか。」
同じ受験スクールの受験生が集合する部屋にふたりで移動した。
「これまでの皆さんの努力を発揮する日がいよいよ明日になりました。
今日は、軽めに身体をほぐすぐらいにして、早めに休んで下さい。
明日は、7時からこの場所でウォーミングアップを始めるので、7時までに集合して下さい。」
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