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「悪いけど、私は先に休ませてもらうわね。」
「はい。おばあちゃん、お休みなさい。」
「いただきま~す。」
ひかるがシャワーを浴びてさっぱりしたところで、遅い夕食を食べ始めた。
「星彩、あなた明日もオフだよね。
さっき歌劇団の楓組のプロデューサーから電話があって、オフの日に申し訳ないけれど、事務所に来てくれないかって、連絡があった。
私にも短時間でも同席して欲しいってことで、私の方に連絡が来たみたい。
園ちゃん明日の予定ってどうなってたっけ?」
「朝の早めの時間なら大丈夫かな。
9~10時とか。
予定が入っているのは、11時からだから。」
「じゃぁ、今日はさっさと寝ないとね。明日は、8:30には出られるようにしておいて。
9時に東京事務所に行くということで返事しておくから。」
「はい。じゃ、お休みなさい。」
星彩は、ベットに入ると
「それにしても、お母さんも同席でプロデューサーから話って何だろう。」と思いながら、いつの間にか眠りに落ちていた。
翌朝
星彩は、7時には目覚め毎日の朝のルーティーンを始めた。ストレッチをして、ゆっくりと身体をほぐしていく。
時間がある時は、更にジョギングや筋トレをするのだが、今日は身体をほぐすだけで、洗面所に行って顔を洗い、食卓に向かった。
「おはよう、おばあちゃん。」
「おはよう。よく眠れたかい?」
「うん。」「ご飯にする?」
「お願いしま~す。ありがとう。
う~ん、おばあちゃんのお味噌汁美味しい~。
関西は、甘めの白みそじゃない?
この味、久しぶり!
お母さんたちは、まだ?」
「最近忙しくて疲れてるみたいでね。いっつも、ギリギリ。
だからね、おにぎりとお茶用意しておくの。」
「星彩ちゃん、おはよう。早いね。」
「もう、ちゃんとストレッチもご飯前にしました!」
「さすが、優等生!
で、優等生の母は、まだ今日もお寝坊さんかな?」
「おはよー。眠い。星彩、もうちゃんと起きてたね。
じゃ、シャワー浴びて準備してくる。」
「ごちそうさまでした。
私も着替えてきます。」
ひかるの準備が済むと、3人は出発した。
園田が運転しながら、
「星彩ちゃん、ゴメン、おにぎりとお茶くれる?」
「運転しながらで大丈夫ですか?」
「毎日のことなんで。」
「私も、食べよう。」とひかるもおにぎりを食べ出した。
食べ終わる頃には、歌劇団の東京事務所に到着した。
トイレで身支度を確認して、事務所に向かった。
コンコン
「失礼します。七杜ひかりです。」
「七杜さん、お休みの処朝早くから、スミマセン。」
「ひかりの母、七杜ひかるでございます。娘がお世話になっております。
こちらは、私の専属マネージャーの園田慶子です。園田も華苑のOGです。」
「どうぞ、お掛けください。
時間が限られておりますので、単刀直入に申し上げますが、ひかりさんの楓組への組替えを考えております。
扇君を呼んでくれるかな。」内線電話で呼び出しをした。
「今、専科の扇 涼が参りますので、それから詳しいお話しをいたします。」
コンコン
「扇です。」
「どうぞ。入ってください。」
「初めまして。専科の扇 涼と申します。」
「初めまして。ひかりの母七杜ひかるです。扇さんのことはよく存じ上げてます。友人にもファンがたくさんいるので。」
「ご存じのように、扇 涼は、人気・実力ともにあり、歌劇団としても、トップスター候補として育成して参りました。ですが、残念なことに、相手役に恵まれず、現在研15ですが専科に在籍しています。
先日千秋楽を迎えた葵組の公演にも特出しておりまして、レビューの一場面でひかりさんと組んでいただきました。
それが、大変評判が良く、扇自身も相手役として好印象を持ったようです。
先日、楓組のトップコンビの退団が発表され、まだ後任の人事は発表されておりません。
私共としては、専科の扇とひかりさんを楓組に組替えの上トップコンビとして就任していただきたいと考えております。
如何でしょうか?」
「まだ、入団半年で、組替えだけでも驚いていましたが、トップ娘役とは…正直驚いております。
もちろん、お引き受けするかどうかは本人次第ですが、まだ右も左も分からない研1で、トップ娘役が務まるでしょうか?」
「以前、黒木あかりさんという大変容姿に優れ人気のあった娘役が、研1で、トップ娘役になったことがあります。彼女の時も、確かに批判があったことは間違いありません。
ですが、扇君は独特の魅力があり、
それが人気の元ではあるのですが、中々その個性を活かし合える相手がいないのです。」
「ひかりさんは、どの色にも染まるけれど、その色に負けない透明感のある輝きが魅力なのです。
私にとっても、今回がラストチャンスと考えております。私が全力でサポートしますので、ぜひ私と組んで貰えないでしょうか。」
「扇さんが、私を相手役にと選んでくださったのであれば、私も全力でお答えしたいと思います。まだ、何も分からない私ですが、よろしくお願いします。」
「では、今日の午後正式に発表させていただきます。よろしくお願いします。」
3人は、東京事務所を辞した。
ひかるたちは、次の仕事へ向かった。
星彩は、ひかりさんを見送ると、駅の方に向かって歩き出そうとした。
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