抜擢

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午後になり、歌劇団から正式に 専科・扇 涼、葵組七杜ひかりの楓組への組替えと、同時にトップコンビ就任が発表された。 TSUTAYAにいる扇の元に、東京事務所から連絡が入り、記者会見をするので、 ふたりで東京事務所に戻るよう指示があった。 「ひかりちゃん、記者会見だって。 一緒に事務所に戻るよ。」 「はい!」 タクシーで東京事務所まで戻ると、 これからのスケジュールを告げられた。 記者会見は、KOホテルで行うこと。 時間は、夕方のニュースの時間帯。 記者会見が終わったら、一緒に大阪に戻ること。 しばらくは、一緒に行動することが増えるので、連絡を密にすることなどが伝えられた。 「扇さん、荷物をもう家から持ってきておいた方が良いでしょうか? 取りに戻る時間なさそうですよね。」 「そうだね。荷造り出来てるなら、 誰かに頼んでも良いけど、まだでしょ?」 「大体はできてるんですが、 忘れ物があると困るので。」 「じゃぁ、1時間で戻れるかな?」 「はい。では、行って来ます。」 タクシーで急いで家に戻ると 「おばあちゃん、大阪に戻るのが早まったから、荷物確認したら出掛けるから。 ゆっくり出来なくて、ゴメンね。 あと、夕方のニュース見てね。」 「ニュース?分かったわ。 気をつけて、元気でね。」 「おばあちゃんも元気でね。 皆によろしく!」 星彩は、バタバタと出掛けていった。 「健と会えずじまいだったね。 また、急に忙しくなったのかしら。」 タクシーの中で、星彩は健にlineしていた。 「急に大阪に戻ることになったので、会えなくて残念! 時間があったら、 夕方のニュース見て下さい。 星彩」 「ただ今戻りました!」 「七杜さん、メイクルームで準備に入って下さい。 テレビの前に、雑誌の取材が入る予定です。」 ベテランになれば、娘役は自分でアクセサリーも作り、メイクもするが、 ひかりはまだそれだけの技術はないので、 今日はメイクさんとスタイリストさんにお任せだ。 「七杜さん、準備できました!」 「ひかりちゃん、かわいい~!」 「扇さんも、一段とカッコイイです!」 さっそく、雑誌社の取材が始まった。 写真を撮り、インタビューを受ける。 メインはトップスターの扇涼だが、 研1のトップ娘役というので、 ひかりにも注目が集まっていた。 写真は、ふたり一緒に、そしてそれぞれひとりで、何枚もポーズを代えて撮影された。 雑誌社の取材が終わると、 今度はテレビ局の取材が入った。 夕方のニュースで流すために、 映像を撮り、コメントを求められた。 「お疲れの処申し訳ありませんが、 取材が終わり次第、大阪に戻っていただきます。」 取材用の服を脱ぎ着替えた。 タクシーで東京駅まで行き、新幹線の座席に着くと、やっと一息ついた。 「急に慌ただしくなって、疲れたでしょ。」 「はい、少し。 トップさんて、やることが沢山あるとは聞いてましたが、ほんとですね。」 「まだ、お披露目公演の話とか出てないからこんなもんだけど、 公演が決まるとね、ポスター撮りとか、また色々ある。 だから、休めるときは私に遠慮しないで休んでね。 まず、食べよう。お腹空いたわ。」 「私も、です。」 忙しいトップ娘役としての日々は、 まだ始まったばかりだ。
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