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受験スクールへ
健と観た後、今度はSS席を取ってもらい、ひかると観劇した。
その時は、楽屋にも連れて行ってもらえた。
ちょうど、ひかるの在籍していた楓組の公演で、ひかるの後輩たちがたくさんいたから、差し入れをしたのだ。
「こんにちは~」と楽屋に入っていくと、
「あ、ひかるのお兄様!
観に来てくださったんですか!」と
あっという間に後輩たちに取り囲まれた。
「今日は、娘にせがまれて、付き添いで~す。
星彩、皆さんにご挨拶なさい。」
「こんにちは。安倍星彩です。
今日は近くで観られるので、とても楽しみにしてきました。」
「星彩ちゃんっていうのね。
よろしく。
ひかるさんに似てかわい~い。
何年生なの?」
「小6です。」
「お兄様は、相変わらずのイケメンで、
カワイイお嬢さんを連れてると、
親子?カップル?ロリコン?
不思議な関係に見える…」
「何言ってるの。
星彩、皆さんのお邪魔になるから、
もう、行くよ。
じゃ、皆頑張ってね。」
「はい。」
星彩たちが楽屋から出て行くと、
後輩たちは化粧や準備をしながら、
「さすが、安倍流星さんとひかるお兄様の血を引いたお嬢さん、とんでもなくかわいい!
華苑を目指すのかなぁ。」
「安倍星彩?
どっかで名前を聞いたような…、
あ、思い出した。」
「なに?」
「この間あったバレエコンクールの
小学生の部で優勝した子が
安倍星彩って名前だった。
ひかるお兄様の娘さんだったんだ~」
「小柄だけど、手足長くて顔小っさいし、プロホーションいいもんね。
娘役になったら、凄く可愛くなりそう。」
「小6かぁ。あと5年。
一緒の舞台に立つようになるかもね~」
その頃、ひかると星彩は、座席についてプログラムを眺めていた。
「あ、お母さん、この人とこの人がとっても素敵だったの。
近くで観るとどんな風なのか楽しみ!
でも、こんな前の真ん中、良く取れたね。」
「そりゃあ、コネがね色々あるから。その気になれば、取れる。OGだからね、一応。」
そして、公演が始まった。
星彩は、食い入るように舞台を観ていて、時に涙を流していた。
レビューでは、キラキラした目をして楽しんでいた。
そして、観劇の帰り道
「お母さん、私分かった気がする。
何がしたいのか。
バレエもピアノも声楽も好きだけど、
何か物足りなかったの。
私、お芝居がしたいのかもしれない。でも、ダンスも歌もやりたいから、
やっぱり華苑音楽学校を受験する!」
「分かった。
じゃあ、同期が講師をしてる受験スクールを見学に行こうか。」
「でも、お母さん忙しくない?」
「まあね。
でも、最初ぐらい一緒に行くわよ。
途中で仕事に行かなきゃならないかもしれないから、おばあちゃんにも付いてきてもらえば安心でしょ。」
というわけで、星彩は華苑音楽学校を目指すことになり、それまで通っていた教室は辞めることになった。
バレエ教室の先生もピアノ・声楽の先生もとても惜しんでいたが、自分の道を見つけたのなら仕方がないと快く送り出してくれた。
ひかるのスケジュールを調整して、
受験スクールへ見学に行くことになった。
元トップ娘役スターだったOGが代表を務めていて、ひかるの同期が大坂校の責任者をしているスクールだった。
見学の日、大坂校の責任者の同期がわざわざ東京に来てくれた。
「ひかる~、久しぶり!」
「あ~ちゃん、忙しいのに、ありがとう。」
「ひかるの娘さんが入るなら、
見に来ないとと思って、飛んできた!
星彩さんね。一条あずみです。
大坂校にいつもはいるので、
たまにしか顔見ないかもしれないけど、よろしくね。
お母さんとは、同期で~す。」
「よろしくお願いします。」
「こちらが、スクールの代表の遠山千草。
ダンス、声楽、バレエの担当講師はそれぞれいて、代表はひとりひとりを総合的に見てアドバイスしてくれます。
中学生からが基本なんだけど、小学生も数人います。
中2までは、週1回のコースから選べるけど、星彩さんはどうするのかな、ひかる?」
「たぶん、週5で通いたいんでしょ、星彩。」
「うん。」
「おお。さすが、練習の鬼の娘だわ。」
「じゃ、クラスを決めるから、バレエと声楽をテストさせてもらおうかな。
着替え持ってきてる?」
「はい。」
「じゃ、あ~ちゃん、更衣室案内してあげて。」
「悪い、私仕事の時間なんで、あと、よろしくね。
お母さん、よろしくお願いします。」
「わかりました。大丈夫よ。
行ってらっしゃい。」
星彩が着替えて教室に戻ってきた。
「じゃ、バレエから見せてもらいますね。」基本のポーズをとらせ、基礎が出来ているか確認していった。
「はい、結構です。
次はジャズダンスなんだけど、経験はある?」
「ジャズダンスは、ないです。」
「じゃあ、一条先生が前で踊るから、それの真似をしてみてくれる?」
アップテンポの曲がかかり、
一条が踊り始めた。
始めはコツがつかめず身体が動かなかったが、次第に曲のテンポに合わせなんとなくそれらしい動きが出来るようになっていった。
「では、最後に声楽をやります。
この中で歌える曲があったら、聞かせて貰えるかな。」
楽譜を見ると、数曲練習したことのある曲があった。
その中の1曲を選んだ。
「この曲にします。」
音域の広い、やや難度の高い曲だったが、伸びやかな声で歌った。
「はい、お疲れ様でした。
では、着替えてきてから、お話ししましょうか。」
応接室に通されて、代表と一条あずみ、星彩、流星の母が座った。
「どうぞ。喉がかわいたでしょ。
飲みながらお話ししましょう。
星彩さんは、バレエと声楽に関しては、今年度受験する人たちの受験クラスに入っていただいても問題ないです。
ただ、ジャズダンスは、未経験のようなので、着いていくのが少し大変かもしれません。
ですから、中2生のクラスがオススメですが、受験クラスに入っていただいても構いません。それは、ご本人の希望で決めていただいて結構です。」
「途中でクラスを変えることはできますか?」
「受験クラスから中2生のクラスへの変更は可能です。
上のクラスへの変更は出来ませんが。」
「わかりました。では、一度ひかるさんとお話ししてからご返事したいと思います。
星彩ちゃんそれでいいかしら?」
「はい。」
「では、これで失礼いたします。
今日は、ありがとうがざいました。
これから、よろしくお願いします。」
ふたりが帰っていくと、代表の遠山と一条が話した。
「凄い子が来たね~。何もしなくても、すぐ合格するレベルじゃない?
基礎も出来てるし、容姿端麗、礼儀正しい。目を引くオーラもある。」
「まぁ、ひかるさんと安倍流星さんの娘だもんね。サラブレッドに決まってる。
しかも、ひかるさんに似て努力家みたいだし。
でも、あの歳であそこまで完成してると、
受験までどう指導するか逆に難しいかもね。特にメンタル面で。」
「そうだね。まだ3年あるもんね。
一番難しい年頃だし、普通のプロダクションとかにも狙われそうだしね。
誘惑多いよね。」
「今まで、華苑に入れようとか考えてなくて、ただ好きでやりたがるからやらせてただけらしいの。
だから、バレエとピアノのコンクールも、この間出たのが初めてなんですって。」
「そういう子なら、週5で受験クラスに入れて稽古漬けにした方が、変に悩まなくていいかもね。
まぁ、本人次第だけど。」
「きっと、受験クラスにって言ってくると思う。
性格までひかるに似てればね。」
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