5-2.幸せを手に

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落ち着いたら式を挙げることになったらしいが、めぐみは、外出時にコソコソしなくてよくなった!と喜んでいた。 そんなめぐみから、ある報告を受けることとなった岸。 「この間、お姉ちゃんが事故った現場に行ったんだ」 「え!!」 いつだったか、めぐみが以前言っていたのだ。 あの時の事故現場を見ても平気なら、その時はじめて、トラウマを克服したことになる、と。 ただ、当時はまだ少し怖くて現場には近寄れない、と言っていたのを覚えている。 だから現場に行けたことですら成長なのだが、平気だったのだろうか。 はやる気持ちを抑えながら岸が問いかける。 「で、大丈夫だった?」 「…はじめはさ、やっぱりあの時の映像が蘇ってきて、怖くて、動機が激しくなってさ、顔色も良くなかったみたいなんだけど、隣に諒也が居て手を握っててくれてたおかげで、大丈夫だった。 あの場所を見たら、悲しくはあるけど、恐怖で足がすくむってことはなくなったよ」 「そっか。リョウさんがついててくれたんだね。じゃあ、完全にトラウマ克服できたってことだよね?」 「うん。もう大丈夫」 「良かった!めぐみ、よく頑張った!」 岸は心底安心して、めぐみに抱きついた。 「真奈美。ずっと、いろいろありがとう」 「うん!」 初めて会った頃は想像もできなかった、めぐみの幸せそうな顔を見て、岸はじんわり胸が熱くなった。 「そして、これからもよろしくね!岸」 それぞれ、ピンの仕事も増えていたが、今後もキシヤブというコンビの相方として、友人として、時には家族のような二人の関係はずっと続いていく。 めぐみは、ありさの墓前で手を合わせていた。 お姉ちゃん。 あの日、私に伝えたかったこと、きっと私は受け止め方を間違えたんだと思う。 お姉ちゃんが期待してくれてたアイドルにはならなかったから、少し悲しませちゃったよね? お姉ちゃんのせいにして、逃げちゃってごめんね。 でも、その選択のおかげで、かけがえのない人たちに出会えたよ。 その人たちのおかげで、私は今、笑えてる。 みづきさんも言ってたけど、あの日、みづきさんに会わせてくれたのは、きっとお姉ちゃんだよね。 あれから、いろいろ変わったんだよ。 お姉ちゃんが見てきた世界を見ることができた。 前向きになることができた。 自分が頑張ったことが、誰かの助けになってることに気づけた。 人に愛される喜びと、愛する喜びを知った。 これから先、何があるかわからないけど、 私がどんな選択をしても、お姉ちゃんは応援してくれるよね? だから、私は私の道をいくね。 大丈夫だよ。 だって、私は今、心から笑えているし、幸せだから。    - 完 -
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