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二人が出て行ったあと、諒也は改めてめぐみに頭を下げる。
「めぐみ、今回は巻き込んでホント申し訳ない。それと、ありがとう。」
「もういいって。何回も聞いた」
「めぐみが苦しんでる時、俺なんにも知らなくて暢気に過ごしてて、凄い情けない。なんかあったら言って、て言ってんのに、何にも言ってくんねーし」
諒也は悔しそうに顔をゆがませている。
「まあ、それは、ちょっと意地みたいなのもあって」
「意地?」
「諒也に言ったら負け、っていうか泣きつくみたいでイヤだったし、それに、私が諒也に言うと、諒也はユイさんに連絡取るかもしれないでしょ?」
「まあ、そうだな」
「ユイさんはそれを狙ってるのかな、て。だからユイさんの思い通りになってたまるか!ていう」
「言ってることはわからんでもないけど…」
悩ましい顔をしている諒也。
まだウダウダ自分を責めてるのだろうか。
「あと、なんか、変な役やらせて悪かった」
「ああ。妻役とかイメージ湧かなくて難しかったかも。しかも、諒也は知らなかったから相談もできないしさ」
「だよな。悪い」
「だから、もういいってば」
諒也は気まずそうな顔をしたかと思えば、思いついたように喋り出した。
「難しいと言いつつ、愛の告白がよくあんなにスラスラ出てきたよな。ビビったわ。あれ全部アドリブか?すげぇドキドキした」
「そこはもう掘り返さなくて良いから」
めぐみは思った。
苦手な恋愛ドラマで勉強した甲斐があった。
あれでも結構テンパってて、正直自分でもどんなふうに言ったかあまり覚えていないけど、改めて振り返られるとかなり恥ずかしい。
そこはスルーしてくれたらいいのに、と。
諒也はなぜか黙り込んで少し寂しそうな顔をしていた。
そんな顔で急に黙られ、不安になるめぐみ。
「どうしたの?」
めぐみがそう問いかけるも反応がない。
めぐみを見ているようだが視線は合わない。
何かを考え込んでいるようだ。
すると呟くように諒也が言った。
「演技なら誰とでもキスできんの?」
「…は?!」
演技なら誰とでもキスできる?!
なにそれ。
なんかその聞き方感じ悪い。
めぐみはそう思って、不機嫌さを隠さず諒也を睨む。
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