4-10.嵐の後

5/6

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
強引に唇を合わせてきたくせに、優しく触れる。 はじめは遠慮気味に、何度か軽く触れあったあと、少し顔を離した諒也が「イヤだったら殴って止めろよ」と言う。 だから、困ったことにイヤじゃないんだってば、なんてめぐみが思ってたら、またすぐに唇に吸い付かれる。そしてさっきと同じように、だけど今度はゆっくりと、何度か角度を変え、キスを繰り返す。 やがて舌が侵入し、口内を舐めつくし、めぐみの舌を誘う。 頭がぼーとしてきためぐみは、誘われるがまま反応を返す。 めぐみが反応したことにより、さらに情熱的に求められ、舌が絡みつく。 「…っん」 漏れ出ためぐみの鼻にかかった甘い声と、二人のキスが奏でる音に、諒也は興奮がおさえられず、めぐみの頭の後ろを手で支え、さらに深く求める。そうして反対の手でめぐみの腰を抱く。 繰り返されるキスに蕩けそうになりながらも、頭の後ろにあった諒也の手が背中を撫ではじめたあたりで、めぐみにわずかな理性が働き、やめさそうとして諒也の腕を掴んだ。 それに気づいた諒也がやっと顔を離した。 至近距離で見つめられ、なんだか恥ずかしくなっためぐみは目を反らした。 めぐみの頬が上気して色気を放っている。 そんなめぐみを間近でみて、諒也は物足りなくなったのか、感情を抑え込むようにめぐみをギュっと抱きしめた。 「やばい。止まれなくなるとこだった」 レンタルルームだったことを、心底残念がっているようだ。 しばらくして諒也が言う。 「はあ、良かった。あんなふうに怖がらせたあとだから、嫌われたと思った」 以前、めぐみを脅かした時のことを言っているのだろう。 「…嫌われたと思った人がするキスなの?今のは」 「や。だって、嫌じゃないとか言われたら嬉しくて。調子乗った。ごめん」 メディアの前ではいつも堂々としてて、俺についてこい!くらいの勢いでライブもこなすのに、一人の女性に対してこんなにしおらしいのが、なんだか少しおかしかった。 正直に言うと、諒也とのキスは気持ち良かったし、とろけそうだった。 たぶん、諒也に惹かれている。 そう思っためぐみは、諒也の背中に手をまわした。 すると、諒也の腕に力が入った。 「諒也。ちょっと苦しい」 「あ、わりい」 そう言ってめぐみを離す諒也。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加