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5-1.スクープ
諒也の元カノと会って話した日から、二か月が経とうとしていた。
あれから、誹謗中傷やイタズラなどの迷惑DMはピタリとやんだ。
やはりユイの仕業だったようだ。
ただ、あの後めぐみに、二、三度、ユイから直接メッセージが届いた。驚くことに、いつもの捨てアカではなくユイ自身のアカウントからだったのだが、内容も特に気になるものではなかったので、めぐみはスルーしていた。
諒也の方にも、復縁を迫ってこなくなったらしい。
あまりにも引き際が良くて少し気持ち悪かったが、平和な日常が戻ってきたことは単純に嬉しかった。
そんなふうにすっかり安心して元通りの生活をしていた時に、チーフマネージャーの茂山がキシヤブの元にやって来た。
「藪内、撮られたぞ」
めぐみは一瞬、何を言われているのかわからなかったが、週刊誌の記事のゲラを見せられて理解した。
そこには、
『熱愛発覚!?人気ロックバンドBlue Jackalボーカル RYO(31)&お笑いコンビキシヤブ藪内(27)ラブラブドライブデート?!』
という見出しがあり、二人が車に乗る姿が写真に収められていた。
お互いマスクもしておらず、間違いなく二人であることが確認できる。
そして、運転席に座る諒也と助手席に座るめぐみが、顔を見合わせながら笑っていて、親し気な様子が見てとれた。
「ブルジャのMVにも出て、過激ファンにターゲットにされてたし、週刊誌にも狙われてたんですかね?」
そう言うのは、マネージャー川田。
川田はキシヤブにひっついていたので、元カノからの陰湿な嫌がらせの数々を知っているし、自分も車のタイヤをパンクさせられるなどの巻き添えをくらっている。
「これに関してコメント求められてるんだが、ただの熱愛ならプライベートは本人に任せてる、でもいいんだけど、どうする?とゆーか、実際どうなんだ?」
茂山に問われる。
記事を見た岸が、横から声をあげる。
「うわ!これってあの時のじゃない?!藪内、油断したね~。一件落着したから緊張が途切れちゃってたんじゃん?」
それは間違いなく、あの日レンタルルームから出て来て車に乗り込んだ時のものだった。
確かに気が緩んでいたかもしれない。
油断して助手席に乗ってしまったのがいけなかった。
だけど、あんなところで記者が張ってるなんて思いもしなかったのだ。
そう思っていたが、記事を流し読みした岸が声をあげる。
「これ、あの女の仕業じゃない?」
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