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諒也と通話中だった茂山が、突然めぐみに変なことを言ってきた。
「藪内。お前、この記事が出る前に結婚発表しねえ?」
「は?いやいや、茂山さん、聞いてました?結婚は偽装なんですってば」
「リョウと結婚する可能性はないのか?」
「そんなの、まだわかんないです」
交際当初から、将来を見据えていることや、一緒に暮らしたいなど、諒也からの結婚したいというアピールは常にある。
しかし、めぐみの気持ちが追いついていないこともわかっているようで、ちゃんとした返事は求められていない。
それなのに、なぜ茂山に催促するように言われなければならないのか。
「深く考えるなって。イマドキ、結婚も離婚もみんな簡単にしてんだろ。ここで結婚って言っとけば、堂々とデートできるんだぞ。破局したら離婚したって言えばいいだけの話じゃないか」
離婚すればいいだけって、むちゃくちゃである。
記事が出る前に結婚発表させる目的は何なのか。
「茂山さんの意図は何ですか?」
「そりゃ、この熱愛記事の雑誌が発売される前に、こっちがそれを上回る結婚発表をしたら、雑誌の売上落ちるし、あっちにダメージ与えられるから、ですよね?」
茂山の代わりに川田が答える。
茂山は、熱愛に関しては特に気にしていないが、どうやらここの出版社にスッパ抜かれるのが気に入らないようなのだ。
というのも、
少し前、同じヤシロのタレントで、泥酔して暴力沙汰を起こした人がいた。相手の人はかすり傷で大事には至らず示談になっているのだが、ここの出版社がその揉め事を掘り起こしたのだ。
被害者に大怪我を負わせたうえ、金で揉み消したと嘘を書かれ、挙句の果てには、薬物に手を出しているとまで書かれた。売買の話を持ち掛けられたことは本当だが、クスリはやっていない。
わりと人気のタレントだったので、ダメージはかなり受けた。
CMもたくさん出演していたので、契約している企業へ謝罪と釈明で走り回って大変そうだった。
出版社に抗議したものの、軽い謝罪で済まされ、茂山はその対応に納得がいっていないのだ。
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