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「私を仕返しに使おうとしてるんですね…」
めぐみは呆れた。
「結婚してるって言っとけば、コソコソしなくていいし、変に口説かれることもないでしょ。あと、オファーサイドもそれなりに考慮はしてくれると思う。藪内にハクもつくし、悪い話じゃないと思うけど」
川田も茂山の意見に賛成なのか、めぐみを説得する側に回った。
メリットしか言わないので、思うように転がされはじめためぐみ。
「…ふ~む」
「バツがつくのがイヤなら、事実婚とかでもいいぞ。それなら離婚しても戸籍は綺麗なままだしな。元カノ騙したなら、世間も欺けよ」
茂山がそんなことを言う。
岸は同情していたが、何かに気づいて声をあげる。
「もし結婚を否定したら、またこの女が藪内に何かしてこないかな、てちょっと心配ではある」
「まさか~」
まさかそんなことはないだろう、と思いはしたけど、思考回路が理解できない人だったことを思い出しためぐみ。
ユイの目の前でラブシーンまで見せつけてやったのに、振り出しに戻ってしまったら元も子もない。
それに、もし二度目があったとしたら、確実に一度目を超える攻撃になるだろう。
あんな陰湿な嫌がらせは勘弁願いたい。
「まぁ、結婚報告したとしても、不特定多数からの誹謗中傷はありそうだけどね。それでも、あの元カノみたいな陰湿な人はそうそういないとは思うけど」
「…そっか…ん~、なら、それもアリか」
少し悩んでいためぐみだったが、どうやら流されてしまったようだ。
電話の向こうの諒也に告げる。
「よし!諒也。結婚しよ」
ご飯食べに行こ、のテンションで軽く言っているが、これはどこまで本気なのやら、なんて岸は少し心配していた。
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