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5-2.幸せを手に
岸の心配をよそに、二人は真剣だったようで、速攻でめぐみの両親へ諒也が挨拶に訪れたようだ。
そして、偽装結婚の時に書いた婚姻届けをそのまま役所に提出し、あっという間に入籍してしまった。
それから、週刊誌の発売日前日、示し合わせたように双方の公式アカウントで、結婚したことを報告し、世間に衝撃を与えた。
茂山の目論見通り、週刊誌の熱愛記事は見向きもされなかった。
熱愛スクープのゲラを持ち込まれてから結婚発表まで、わずか三日ほどの出来事だ。
慌ただしく、しかもまわりに流されるようにめぐみは結婚を決めたわけだが、岸は、本当に後悔してないか心配になり、めぐみに訊ねていた。
「めぐみ、本当にこんな形で決めちゃって良かったの?もっとちゃんと考えた方が良かったんじゃない?」
「ん~。でも、どれだけ時間をかけて慎重に考えて決めたとしても、失敗しちゃう時はしちゃうし、こういうのって勢いも必要かな、て」
「勢いでしか決めてない気もするけど」
「真奈美。心配してくれてありがとう」
岸を見ながら笑顔でお礼をいうめぐみ。
え、急に何?と面食らう岸。
「確かに私、仕方ないかーみたいな感じで、半ば諦めるように何かを決めること結構あるけど、自分の意志に反することはしてないよ。ただ、一歩踏み出す勇気がなくて、誰かに背中を押してもらいたいだけな気がするんだ」
めぐみが真剣な話をはじめたので、岸は黙って聞いていた。
「諒也のことはちゃんと好きだよ。ケンカだってするし、何があるかわかんないから、絶対別れない、なんてことは言えないけど、少なくとも今は、ずっと一緒にいたいって思ってる。
だから、諒也を人生のパートナーにするのもいいかもしれないな、て思ったのも事実。この先、そんなふうに思える人に出会える気もしないしね」
めぐみは今、諒也と半同棲状態にある。
24時間テレビのあと、岸の怪我が治ったら別々に暮らそうと言っていたが、めぐみが諒也の元カノから嫌がらせを受けるようになり、心配した岸がこの問題が片付くまでは一緒にいる、と言い出したので、結局ずっと同居していたのだ。
それから諒也と付き合うことになり、徐々に岸と一緒に暮らしている家にあまり帰ってこなくなったというわけ。
それだけ、居心地がいいのだろう。
「諒也はね、真奈美以外ではじめて、すべてをさらけ出しても大丈夫かな、て安心できた存在なんだよ。
だから、心配しなくても大丈夫。私、これでも結構幸せ感じてるんだよ」
「…そっか。そんな信頼できる存在になってたんだね。良かった。
めぐみ、いろいろあったけど、結婚おめでとう!」
岸がそう言うと、めぐみは「ありがとう」と、破顔した。
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