1-1.ラストライブの反響

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「でも、ちょっと波が来てる気がするよ。藪内も昨日ので注目されたし」 「芸人がアイドルまがいのことして注目されるのもどうなんって話よ。アンチの方が多いかもよ」 「アンチがいるのは有名人の証拠!」 「素晴らしいポジティブ思考ですな」 ミラフェのライブに出演することも随分渋っていためぐみは、お笑いとは違うジャンルで注目されることを素直に喜べずにいた。 「でもさ、あんな藪内の姿はじめて見たけど、凄かったわ。アイドルとして全然やっていけるよね」 どうやら、昨日のライブは岸も見に行っていたようだ。 「まあ、楽しいは楽しかったけど、もういいかな~。ありさの代役は今回だけで充分」 「なんか、もったいな」 「私、性格的にアイドル向きじゃないしね。岸ならわかるでしょ?」 「そうかな~。塩対応とか笑わないアイドルとか、そういうので売り出してもいけたんじゃない?」 「…マニアックなファンにしかウケなさそ。…はぁ~、普段表情筋使わないから、今頬っぺた筋肉痛みたいになってるよ」 そう言いながら、めぐみは頬をマッサージしている。 「それは言い過ぎでしょ。顔が筋肉痛とか聞いたことないわ」 「いやいや、ここにも咬筋(こうきん)ていう筋肉があって、歯ぎしりしたりすると筋肉疲労起こすことあるから」 「へぇ~。って、咬筋とか普通の人はそんな名前とか知らんし!ここぞとばかりに知識出してくんなし! ……あ、そういえば昨日めぐみ歯ぎしりしてたっぽいよ!こっちまで聞こえてきてた」 「だからか……疲れてると歯ぎしりしやすいっていうしな」 この二人、実は一緒に暮らしている。 めぐみは去年まで大学に通っていたし、岸はバイト生活をしていたためすれ違いが多く、ネタ合わせをする時間がなかなか確保できなかったことから、コンビを組んだ後に一緒に暮らし始めた。 『キシヤブ』というコンビ名は、お互いの苗字の「岸」と「藪内」から取っている。 コンビを組むにあたって、みんなにわかりやすくするために呼び方も変えたのだが、学生時代はお互い「まなみ」「めぐみ」と呼んでいたので、時々むかしの呼び方をする時もある。
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