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急展開のオフを終えて、流星とひかるはそれぞれの日常へと戻っていった。 「もしもし、おはよう。ひかるです。 今日、社長に報告したいことと、相談したいことがあるから、時間取って欲しいんだけど、大丈夫そうかな? もちろん、マネージャーにも同席してもらいたいんだけど。 昼ならOK? じゃあ、どこかランチしながら話が出来る店抑えて貰っておいてもいい? 今日の今日で申し訳ない。 11:30位には、事務所に行くから。 よろしくね。」 マネージャーへの連絡を終えると、 キャリーバッグの片付けを始めた。 短期の移動はしょっちゅうだから、 手慣れたもので、テキパキと片付け、 すぐ次に使えるよう軽く掃除して、 必ず持参する移動先用の化粧品などを補充しておく。 それが済むと、洗濯機を回しながらシャワーを浴びて、外出の準備だ。 身支度を終えて、出掛ける前に毎朝の “おはよう、行って来ます”ツイートも忘れずに! 流星のフィアンセになっても “皆の彼氏”であることは変わらないのだから。 「おはようございま~す。」と 所属事務所のドアを開け入っていく。 芸能事務所と言っても、所属タレントは七杜ひかるともう一人声優が所属しているだけの小さな事務所だ。 退団時に所属事務所を決める時、小さい事務所であることを不安視する声もあった。もっと大きな事務所から声もかかっていた。 しかし、これまでの華苑OGとは違う道を模索していた七杜は、あえて既成概念に囚われず、自分の意見が言えて、新しい挑戦を受けいれてくれる今の事務所に決めたのだった。 社長とマネージャーと予約しておいて貰った店へと向かう。 相談があるということだったので、個室が用意されていた。 「社長、お忙し時間を割いていただきありがとうございます。」 料理が揃うと、呼ぶまで入室しないよう ウェイトレスに伝えて、早速話を始めた。 「料理が冷めてしまうから、食べながら話しましょうか。園田さんから、報告と相談があるって聞いてたけど。」 「はい。オフの間、音楽学校の恩師と会ってきました。安倍流星先生という方です。」 「ああ、元ミュージカル俳優の人だよね。」 「そうです。本科生時代演劇の指導をしていただきました。劇団員になってからも、色々アドバイスいただいたり、というか、実は私が現役だった頃からの大ファンで、追っかけだったんです。 退団して東京に来てからは、お会いする機会がなかったのですが、東京での活動も軌道に乗ってきたので、交際を申し込みに行ってきました。」 「それで、終わりじゃないよね。七杜君のことだから…」 「ご理解いただけていて、助かります。」 横でマネージャーの園田がくすっと笑らった。 「それで、結論から言うと、結婚することになりました。」 「そりゃま、ずいぶんな急展開ですね。交際期間ゼロで、婚約?」 「実は、入籍しようかということになったんですが、戸籍謄本とか取り寄せないといけない書類があるんですね。それが分かったので、まあ婚約といえばそういうことになるのかと。実際は、手続き準備期間なんですが。 社長には、できれば証人をお願いしたいと思っています。」 「なるほど、それが相談というかお願いのひとつですね。で、後は?」 「彼が、安倍流星さんが、来年度末で音楽学校を退職して、芸能活動に復帰する事になりました。 私は、これまでもプライベートのことはほぼ公表してこなかったので、入籍も当面公表しないつもりです。 そのことも関係するのですが、彼をこちらの事務所に所属させていただけないかと。いずれ本人から正式に打診があると思いますが、検討しておいていただけないでしょうか。」 「それは、七杜君の希望ですか。」 「もちろん相談してのことですが、主に私の希望です。いずれ、彼との共演の機会を増やしていきたいと思ってます。 私達は、入籍しても別居生活のままにする予定ですし、夫婦と言うより、互いが相手のファンなので、励まし合うパートナーの関係になると思います。」 「そうですか。お話しの趣旨は分かりました。 それで、園田さんは、おふたりのことをいつぐらいからご存知だったのかな。安倍流星さんは、園田さんの恩師でもあるわけですよね。」 「ひかるちゃんが安倍先生の大ファンなのは、かなり昔といいますか、安倍先生を追いかけて、ミュージカル俳優になるために華苑音楽学校に入ったくらいですから…。 まぁ、華苑ファンやOGの間では、ひかるちゃんの安倍先生Loveは結構有名な話でしたし…でも、この急展開は、私も想定外でした。交際しているという話もなかったですから…」 「う~ん、それはマネージャーとしては少々職務怠慢なのではないですか?園田さん。」
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