最初のつまづき

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最初のつまづき

20倍近い競争を勝ち抜き合格を手にした私は、華苑音楽学校の入学式を迎えた。 皆は、華苑歌劇団の舞台に立つために死に物狂いで頑張って来た人たちだ。 みんな美人で垢抜けていて、凜としていた。 その中で、たぶん私だけが少し浮いていたかもしれない。 皆とは違い、私は、華苑の舞台に立つのが最終目標ではなかったし、バレエなどの基礎がほとんど出来ていなかったうえに、 田舎者丸出しで全然垢抜けていていなかった。 でも、絶対頑張る! その気持ちだけは誰にも負けない自信があった。 案の定、授業が始まると、付いていくのがやっとだった。それでも、 “絶対娘役のトップスターになる” その思いを秘めて、誰よりも努力した。 私は、元々アルトの声質だった。 中々高い声を出すことが出来ない。 しかし、ヒロインになるには、 ソプラノであることが絶対だった。 「訓練次第で、高音は出るようになるはずよ。」 先生のその言葉を信じ、頑張った。 ようやく娘役らしい綺麗なソプラノが出せるようになった頃、 最初のつまづきが起きた。 身長が延びてきたのだ。 入学した時は、156㎝だった。 小6の頃から延びてなかったから、 もう背は伸びないと思っていた。 それが、気が付いたら、165㎝になっていた…。 どうして… これ以上伸びたら、娘役になれない…。 娘役でなければ、 “彼”の隣には立てないのに…。 私は、予定外の不幸に、屋上の片隅でひとり泣いた。
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