は・な・び・ら

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は・な・び・ら

花びらの 舞い散る中に たたずんで    微笑む君が ただ、いとおしい 「お別れね」   差し出す右手 握るのは     これが最後と 思いたくない いくつもの   春を過ごして きただろう     思いも告げず 散る花のごと 二十歳には 一人寂しく 花も見ず    春過ぎるのも 気づきもせずに 恋なのか わかりもせずに 終ってた    いつのまにやら 散る花のよに 七杜ひかるが退団する日。 あいつは、桜の舞い散る中、白のタキシードに身に纏い、ファンに別れを告げ、同時にファンの皆を“花嫁”にするという心憎い演出をした。 流石、七杜ひかるだと思った。 この日を境に、俺と七杜は“教師と生徒”ではなくなった。あいつは、相変わらず俺のことを“先生”と呼んでくれるけど、もう、教えることなど何もない。 教え子の成長は、嬉しいような淋しいな複雑な心境だった。 これからの俺とあいつはどんな関係なんだろう。 元教え子?それ以上でもそれ以下でもなく…。まぁ、そんなところか… あいつがまだ本科生の頃、真っ直ぐにぶつけてくる気持ちが、正直、きつかった。 俺もケガから舞台人を諦めて音楽学校の教師になったばかり。役者への未練もあったし、なにしろ、自分自身が教師として若くて未熟過ぎた。 お前の気持ちが分かっても、受け止めることも、拒むことも出来ず、ただ見ない振り、気付かない振りをするしかなかった。 大切に想っているからこそ、大事な教え子の未来を潰すわけにはいかなかったから。 今や、声優や舞台、アーティスト、様々な分野に果敢に挑戦して進化することを止めない彼女。 その、七杜から 「久しぶりにお食事でもしませんか。お会いしたいです。 今度、関西での仕事があるので、 その時連絡します。 しばらく学校へも行っていないので。 では、また。」 と連絡が来た。
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