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それ、以前のこと
私は、矢島文子(やじま ふみこ)
北関東の地方都市の出身。
生まれ育った街は、良く言えば自然豊か。いわゆる、“田舎”だ。
3人の兄がおり、幼い頃は兄たちと野山を駆け巡り、ヒーローごっこをして遊ぶような子どもだった。
4人兄弟だから、女の子だからといって、
私1人のために服を買う余裕もなかったのか、兄のお下がりばかり。
必然的に、服はズボンばかりになり、
“カワイイ”より“カッコイイ”が好きな男の子のように育ってしまった。
だから、当然髪はいつもショートカット。
性格的にも、さっぱりとしていてどちらかと言えば男の子っぽかったかもしれない。
それでも、女の子同士の付き合いが苦手というわけでもなかった。
演劇と歌が好きなので、中学生になると演劇部と合唱部に入った。
中学生になると男子はシャイになるのか、演劇部と合唱部には、男子が少なかった。
となると、諸々の要素を勘案した結果、私は演劇部では、男の子の役をすることが多かった。
背はそれほど高くないけれど、
“絶対カワイイじゃないとヤダ”というわけでもなかったので、それはそれで楽しく活動していた。
ところが、そんな日常を送っていた私がある日突然、“女の子”“カワイイ”に目覚める日が来るとは、予想もしていなかった。
本当に、それは、突然やって来た…
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