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彼は辺りを見渡した。
見渡す限り闇、闇、闇、闇、闇、闇闇闇闇闇闇闇…
闇色がどこまでも続く。
彼の足元には古びたカンテラ。燃料は空。
ライターの燃料も切れ、マッチはしけてて使えなかった。
明かりとなるものを全て使い切ってしまった彼は途方に暮れていた。
唯一の明かりとなりそうな月明かりすらも、高く大きく立派に育った木々によって遮断されてしまっている。
まるで枝や葉が生きていて、月と彼の間にわざと割り込んでいるようだった。
彼の肌に生暖かい風が触れる。
刹那、露出した額に汗が滲み始めた。
「…クソが」
彼は再び呟いた。
先程とは違い少し苛ついた口調だった。
そんな彼の様子を少し離れた木の陰から見ている者がいた。
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