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【デザート】おまけ
「美味しかったね」
「本当に美味しかったです。今、凄い幸せ」
満足気に頬を緩ませながら望月さんがそう言う。
動物園を出てから入った喫茶店で、俺はサンドイッチを彼女はハヤシライスを頼んだ。
食後に紅茶を飲みながら、周囲を見渡す。
いかにも老舗という趣がある店内は薄暗くて、俺たち以外にお客さんは見当たらない。
カウンターの中には白髭をたくわえたマスターが慣れた手つきでコーヒーを淹れている。
「会食が苦手っていうの、私もちょっと気持ち分かりますよ」
「え、本当に?」
「飲み会とか緊張して、あんまり食べれなくなりますもん」
彼女は言い終わると、カップに口をつけた。
「もっと象みたいに、もりもり食べれたら良いんだけど……俺にはどうも無理で」
苦笑いを浮かべながら言うと、望月さんはぶんぶんと首を左右に振る。
「違いますよ」
「えっ?」
「象って大きいから大食いと思われてるけど、実際は体重の5%程度の量しか食べないんです」
カップに手を添えながら、彼女は得意げにそう言った。
『なあ、おい、聞いたか?!』と心の中で呟く。
「少食な象……!」
おわり.
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