7人が本棚に入れています
本棚に追加
きっかけは小学生の頃だった。
父の仕事の都合で引っ越して、転校初日の俺は緊張の面持ちで教室中の視線が集まる中、なんとか自己紹介を終えた。
休み時間になると廊下に集まった他のクラスの子達が、ひそひそとこちらを見ながら囁く。
『転校生、かっこよくない?』
『左利きなんだ』
『サッカー上手いんだってさ』
気にしないようにしようと努めても、無意識に耳に入ってくる。
給食の時間になると、机を突き合わせたクラスメイト達があれこれ尋ねてくる。
先割れスプーンを持つ手が小刻みに震えていることに、気付かれるのが怖かった。
『ねぇ』
『あのさ』
ちゃんと答えなければ。
変に思われないようにしないと。
"普通に食べなきゃ、普通にしてなきゃ"
だけど、普通でいることが何よりも一番難しい。
最初のコメントを投稿しよう!