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時間をかけて園内を見て回ると、すっかり日は暮れて淡い色の灯りがぽつぽつと視線の先に点っていく。
近くを歩く家族連れが帰りたくないと泣きじゃくる子供に手を焼いている。
「すっかり暗くなっちゃいましたね」
のんびりとした口調で言う望月さんに向かって「そうですね」と返す。
「……あの」
しんとした夕闇の中に、自分の強張った声が響く。
望月さんは立ち止まって、こちらを見上げた。
「あの、もしよければ、これから食事しませんか」
ことさら真剣な面持ちで告げた俺を見て、望月さんは一瞬きょとんとした顔をした。
それから彼女は、手で口元を覆い隠しながら笑って頷く。
「いえ、笑っちゃってごめんなさい。凄い覚悟を決めたみたいな顔するから、私、てっきり……」
「えっ」
「はい、是非行きましょう」
こぼれるような笑顔を浮かべた彼女がそう答えた時、不意に耳馴染みのある音が聞こえ、目の前を歩いていた家族連れが「あっ」と短い声をあげた。
藍色の澄んだ夜空に大輪の花火があがった。
息を呑むほど美しく煌めきながら、地面目掛けて散っていく。
それを見上げながら、俺はふと思い出した。
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