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「今日も雨!?腹立つわー。散歩に行けないんじゃ設定保育がしんどいじゃない」
6カ月の子どもを抱っこしながら悪態を吐くありさ先生に私は一瞬固まりそうになる。やはりまだ、彼女の棘を持った言葉には身体が固まる。怖くなる。
そんな自分が弱くて惨めで悔しい。
だけど、もういいやって決めたから。
私は、自分でも「きっしょいな」て思うにちゃりとした笑みを浮かべた。
「もっと降ってほしいですね」
「……はぁ?」
6カ月の赤ちゃんを抱いたままありさ先生が振り向いた。
眉間に皺を寄せて不機嫌な顔で、機嫌を害した声で。
その目を見たら、すぐ、逸らされた。
瞬間、あれ?、て思った。
この人、こんなにちっちゃくて
目を合わせられない人だったったけ?
私は妙に高ぶる気持ちのまま言葉を続けた。
「ありさ先生が不幸になるな、ら、も、もっと、雨が降ってほしいな、って思って。いつも、そう、いつも、私にチクチク言うくせ、に、し、し仕事はろくにしていないんで」
妙に冷静で辛辣な言葉が出たけど、無様にどもった。
だけどそれは十分な威力を発揮したようで、ありさ先生の顔がみるみる青くなった。
ああなんだ
この人、打たれ弱いんだ
そう思ったら、なんだか、目の前の人が怖くもなんともなくなった。
一度勇気を出せば、なんだかスッと心が楽になった私は笑った。
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