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「たとえば、こんな役が似合う、こういう演技を見せるその人が見たいとお願いをするように決めたり、逆にこれを演じてみせろと挑発するように書くこともあります。もちろんそういう時でも、根本的にはその人ならできると信用しているから成り立つのですが。今回で言うなら、柴山さんは普段の彼のイメージに似合うと思った人物像で、池端さんは新しい、今までの彼女では想像がつかない役を演じてもらおうと思いながら描きました」
景斗くんの場合は役が少し似合いすぎて、観てるこっちも苦しくなったけど。
「そうですか……」
おじさまはそのまま考え込むように少し俯いた。裏話を知った上で、舞台上の二人の様子を思い返してるのだろうか。
そこで、注文した飲み物が運ばれてきた。
おじさまの手前にはブラックコーヒー、私の前にはさび色の紅茶だ。
本当なら少しだけミルクが欲しいけど、あるのは常温保存できるポーションだけだった。仕方なくそのまま口に含むと、逆に口内が乾燥しそうなシャープで渋い風味が舌に広がった。やっぱり、向こうとこっちとでは味が違う。
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