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『役に恥じないでいれてるようでよかったです。夜公演も頑張ります』
夜公演は早めの四時半から。あと二時間ほど先だ。
『兄の伝言には何も返しようがないですけど……今日、一緒に来てるわけじゃないんですね』
そこでメッセージが途切れ、新しいのが別で届いていた。見ると、この数分後という送信履歴だ。
『あんな人ですけど、見限らないであげてください。本気で舞子さんのこと大事にしてるって俺にもわかるし……俺からも、よろしくお願いします』
妙に歯切れの悪い終わり方に思えた。これが台詞だったら変更したくてうずうずしてる。
ふと思い当たる。
もしかして、昨日の喧嘩のこと聞かされてる? 両親とは上手くいってないと聞いてるけど、プライベートの兄弟仲まで悪いわけではないし、互いに相談を持ちかけていても不思議じゃない。
冷静に考えると、ただそれだけだ。
でも、なんで私のことまでそう勝手に……
きゅっと唇を嚙む。
返事はしないで、そっとアプリを閉じた。
スマホを仕舞って顔を上げると、おじさまが戻っていた。
気のせいか、表情がさっきより元気がない。
「……どうかされましたか?」
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