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「高橋さんの、お迎えにくるそのお相手はどんな人ですか? ……ああ失礼、そんなことを聞くのは不躾ですよね」
おじさまの声にはっとする。
「いえ、構いません」
どうしてだろう、私も全部話してしまいたい。自分が抱えてる重いことも。
「……同業者です。とても誠実で、普段はクールで余裕ぶって振る舞うことが多いのですが、実はとても情熱的で少年みたいなところがあって、何より、いつもありのまま優しいんです」
記憶を辿る。
「書くのも素晴らしい作品ばかりで、前から同志として尊敬していた人ですが、私の書いた脚本を好きだと彼が言ってくださったのをきっかけに個人的なつきあいを始めました」
「その人がいいと思った理由をお聞きしてもよろしいですか?」
おじさまは優しく促す。
私はティーカップを口に運び再びソーサーに置いた。
「……最近まで行ってた留学は彼に追いつきたくて決心したことでした。出発する前から、自分が彼に対して特別な感情を抱いてることは自覚していて、でもだからこそその時の自分の実力の限界……彼には到底及ばないそれが、許せなくて」
指先でカップの持ち手を撫でながら続ける。
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