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それはもちろん。自分の作品を観てほしいとも、ただ一緒の時間を過ごしたいとも、思っていた。
苦笑いが浮かぶ。
「……喧嘩してしまったんです、つい昨日の夕方に。くだらない原因です」
「そうですか」
「はい。間接的にですが、結婚を意識させるようなことを言ったら、急に警戒されてしまって。重いのでしょうか? よく聞きますものね、男の人はそういう話を持ち出されると逃げたくなると。こっちはただ本気で進展させたいと思ってるだけなのに」
「裏切られたような気がしましたか?」
「……そんな強い感情じゃありませんが、間違いなくショックは受けました。そんなに信用されていないのかしら、と思うと。だったら、もう私たちも……」
言葉が途切れる。
するとおじさま穏やかな笑みを浮かべた。
「直前まで留学のことを伝えてもらえなかった相手の方も、似た気持ちだったのでは?」
おじさまの言葉に、はっとした。弾かれたように彼のほうを向く。
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