愛に一番近い感情

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「改めて聞きますが、その方に対する気持ちは何ですか?」 「そんなの……」  答えようとする。でも、それ以上言葉が続かなかった。 「愛か、あるいはそれに近い感情ですか?」  追い打ちがかかる。 「……はい。そうだと……」  おじさまは、そのどっちなのかは聞かず穏やかなままに続けた。 「では、その気持ちと、こうありたい願いを具現化させる良い方法とは、何でしょうか? 喧嘩の原因が結婚を意識させるような発言だったとおっしゃってましたが、関係の進展を結婚と同義と思う理由は何ですか?」 「それが、お互いの間でも周りも、気持ちが本物だと認められる確実な方法だから、ではないですか?」 「でも、必ずしも本人たちが一番幸せでいられる方法と限らないのでは」  言葉に詰まった。  そんな風に考えたことなんて、なかった。  私が言い返せないでいると、おじさまは流れるように続けた。 「だから、抽象的で回りくどい提案を通してではなく、ただ気持ちをそのまま伝えれば良い。それができるのであれば。自分と妻、そして息子のことを考えてこそ、私はそう思う。この先どうしたいかは、その後でも話し合えます」 「そんな簡単な話では――」
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