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四時のお迎えと言ってたのに、それについては会話の中で一度も触れられなかった。嘘だと見抜いた上で、そのまま私の話にもつきあってくれてたのかもしれない。
ふと画面が光り、メッセージ受信を知らされる。
『思ったよりに早く脱稿できた』
京介さんだった。
『もう終演後ですよね? 今からでもいいなら、会えます。昨夜言ったことをちゃんと説明させてほしい。景斗への伝言もありがとう』
受信の通知で光った画面は、すぐ暗くなった。
返信を急ぎはしない。
説明しないといけないのは私だってそうだ。でも、会いたい気持ちは逸るのに、話をする勇気はまだためらったまま。
……今日会った人のことは、彼に伝えるべきだろうか?
違う。伝えるならもっと大事なことがある。
見つけたい、私たちにとっての幸せでいられる方法を。
そのために、まずはそのまま伝える。私の、愛か、それに一番近い、今の彼に向けた感情を。
了
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