#文披31題 day2.透明

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#文披31題 day2.透明

 思えば、この家に引っ越してきてからおかしなことばかり起こっている気がする。  お気に入りでいつも手元に置いていたはずの万年筆や腕時計はなくなるし、何より無人のはずの2階から足音がしたり、一人暮らしなのに他の誰かの気配がしてしょうがない。  安易に怪奇現象だとは信じたくないが、昨日会った日傘の女のこともある。しかし落ち着いて思い起こせば、彼女は全身はっきりと生きている人間と同じように見えた。幽霊とは、もっと半透明で不確かな存在ではないのだろうか。常識的に考えれば、何かの見間違いか寝不足故の幻覚と見るべきだろう。 「幽霊とは、透き通った朧げな者たちだけではない。そもそも、お前が昨日見たアレは幽霊に非ず。もっと別のモノだ」  背後から、耳元に囁きかけるような声がした。  すぐさま振り返るが、そこにはただ無人の書斎が広がっている。そもそも一人暮らしで来客もないこの真夜中に、私の他に誰もいるはずがない。  ──この家には、私以外にも透明な誰かが住んでいるようだ。
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