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「あ、ここだけの話にしといてね。局の関係者は責任問題になるからか誰もそのことは言わなかったけど、ダイバーの人が責任感じて、個人的にお見舞いを理由に会いに来て教えてくれたんだ」
「……分かった。……でも、それじゃ、どういうこと?」
「最初の、村長の話覚えてる?」
「えっと……」
「誰に生贄を捧げるか」
「って、人魚が嵐を呼ぶからって……あ」
ぞく、と背筋を寒気が走った。
「……まさか」
「分からないけど。でも確かに人の手だった、と思うんだ。……ごめんね。変な話して」
「ううん」
「……言っても誰も信じないだろうし、面白おかしくされても嫌だから、運が良かったんだってことにしてみはるちゃん以外には話すつもりないけど……心配してくれてたし、誰かひとりくらい本当のこと知ってて欲しいから」
「うん。……」
その時ドアがノックされて
「そろそろ時間です」
係員の人が呼びに来た。
「はい」
椅子から立ち上がると、ユウキ君が言った。
「なんだか、不思議だね」
「ん?」
「僕らのがよっぽどおかしな体験してきたのに、ホラー映画の宣伝するなんて」
「……そうだね」
でも、世の中そんなものかもしれない。
本当のことはいつも隠されてて嘘の中で生きてるのかも、なんて思いながらステージに向かった。
『ニセ雨乞い祭と人魚(?)』了
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