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「あー……」
思い出すとめちゃくちゃ恥ずかしいし、悔しいけど。
「雨でお蔵入りにならなければ、みはるちゃんが笑いものになってたと思うとすごい申し訳ないから、大きな声では言えないけど、これで良かったと思う」
「……うん」
事務所も、今回は映画のことがあるから引き受けたけど、次からはドッキリ系の仕事は絶対に受けないと言ってくれた。
「それから……これ他の人には言ってないんだけど」
「なに?」
「……舟がひっくり返って、海に投げ出されたじゃん?で、ダイバーがすぐに来てくれるって話だったのに全然来なかったんだ。すごい焦って。もうダメなのかなと思ったら急に曇って雨が降ってきて」
「うん」
「雨と雷で周りの状況なんて分からなくなった頃、誰かが手を掴んで、体を支えてくれるのを感じたんだ。あ、ダイバーが来てくれたんだと思って……それで安心したら意識が途切れて。気がついたら病院に居た」
「……良かったね」
本当に、ひとつ間違ったらどうなってただろうと思うと、今でも涙出そうになる。
「うん。……でも、あとで聞いたらダイバーは誰も僕に触ってもいないっていうんだ」
「え?」
「今考えたら怖い話なんだけど、段取りの行き違いがあって、ダイバーが海に入ろうとした時にはまだ空は晴れてたけどもう海は荒れ始めて、とても僕のところまでたどり着ける波じゃなかったんだって」
「そんな……」
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