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「なんか、気持ち悪いお祭りだね。ユウキ君」
ロケ車での休憩中、とはいっても隠しカメラは回っていて、休憩中だと思っているのはターゲットの彼だけだ。
「そうだね。僕らの映画もそうだったけど、こういう、閉鎖的な集落?ってよそ者からしたら怖いよね。あの生贄の話なんか、マジでビビった」
「本当にやりそうな顔してたよね」
「ね。……今年はカラ梅雨で雨も少なかったし、この地方はダムの貯水率も低くてかなりヤバいとか、さっきのニュースでもやってたしね」
入った食堂でたまたま流れていたそのニュースも、実はこの収録用に局が用意したニセのニュース番組でスタッフの仕込みだ。
でも、雨が少なかったのは本当だし、全国的にもこの夏は節水を呼び掛けていたりするから、あながち全くの嘘でもない。
「あのさ、みはるちゃん。……さっき、あの村長さんが、僕なんか真っ先に投げ込まれてたって言ってたじゃん?」
「うん」
「僕カナヅチでさ。泳ぎ全くダメで、プールとか海も怖くてほとんど行ったことなくって」
「本当に?」
「うん。だから、あの話すっごい怖くって。想像しただけで無理って思った」
ロケ車はクーラーが効いているけど、外は30度超。
暑さが引かないせいだろうけど、額に汗を浮かべて苦笑いする彼を見るとかわいそうになった。
さすがに危険だから投げ込んだりはしないけど、沖まで舟で連れて行くところまではやって、そこでネタばらしする段取りらしく。
藁人形と聞いてたのに、自分がその代わりに縛られて舟に乗せられるだけでもすごい恐怖だろうし、泳げないなら尚更だろうなと思う。
せっかくB級でも映画に出られても、宣伝のためにそこまでしないといけないって、やっぱり厳しい世界だなぁ……と思いながらお茶を飲んだ。
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