夢、女の子、雨。

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 外は、夏の湿気と曇り空だった。  こんな空気。こんな湿気。こんな温度。こんな暗さ。  それらが、カルテットみたいにきれいに重なると、なぜかむかしに見た夢を思い出してしまう。  夢の中で僕は、子供よりも大きくて、大人よりは幼かった。そんな中途半端な僕は、知らない町で、知らない女の子に手を引かれていた。  女の子は明るくて活発で、そして綺麗だった。そんな女の子に、僕は少し気後れしながらも、ちょっとわくわくしていた。  女の子は、その町に詳しかった。  色々なところに僕を連れていっては、色々な話をしてくれた。  僕は女の子の話が、楽しみだった。  女の子は、町をぐるりと囲う溝まで僕を連れて、雨男と晴女の話をした。  この町に住む男の子は、大人になると雨を降らすようになる。  同じように、女の子は、大人になると天気を晴れさせるようになる。  そのバランスが、うまく保たれていて。  雨の日もあれば、晴れの日もある。  むかしは、そうだったのだと、教えてくれた。 「今は違うの?」  そう聞くと、今は女の子しかいなくて、だから毎日晴れが続いている。そう教えてくれた。  それから女の子は。 「昔は、ここに水が貯まっていて。船で町の外に出られたんだ。今じゃ雨が降らないから、町から出られないんだけどね」  そうして、町の外を眺めた。  その横顔は。  嬉しいのか悲しいのか。  よくわからない表情だった。 「――。」  女の子が、なにかを言った。  それを聞き取る前に、夢は終わってしまう。  その夢を思い出すたびに、僕は気になってしまう。  ありもしない、あの町に。  雨は降ったのだろうか、と。  
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