散らぬ期待と提灯花

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もう何日この部屋に居るだろうか。 職場や仕事仲間に何の連絡もできずに此処に連れてこられたわけだが、もうどうでも良くなっている。 しつこいが、自身が唯一抱いている不安は、ここの家主である彼が帰ってきてくれるかどうかだけ。 自分がこの先どうなるか、一生このままなのかという不安はない。 もし帰って来なかったら必然的にここで死ぬわけだが、死に対しての恐怖はない。 単に捨てられる事だけが怖いのだ。 仮に解放されたとしても、それは捨てられるのと同義であって何も嬉しくない。 それならまだここで期待を抱きながら帰りを待つ方が良い。 とは言えどもそろそろ本当に辛くなってきた。 勝手に涙は出てくるし胸もざわざわする。 当然眠る事もできず、食事も喉を通らない。 ただドアが開くのをひたすらに待つばかり。
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