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「……っおか……っ……おかえ……うう…っ」
「何泣いてんだよ」
情けない出迎えに対し、彼は少しだけ意地悪な言葉を返した。
でも俺はその声を聞けるだけで良いんだ。
募った不安が大きければ大きい程嬉しさが増す。
今日は特に大きかったようで、安堵からまた涙が溢れてきてしまった。
「だっ…だって…か、帰ってこな、い……からっ……もう…す、す……捨てられ…かと…っ思っ…」
噦り上がるせいで上手く言葉が繋げられない。
子供じゃあるまいし我ながらなんて情けないんだろう。しかし自身を客観的に見る事ができるくらいの余裕は出たという事か。
自分はそれ程までこの人の事が好きで、如何に依存しているかを思い知らされる。
だけど自分には本当に彼しか居ない。
別の誰かなんて嫌だし、彼以外考えられない。
なのに彼は「ふぅん…まだ俺の事信用してねぇんだな」と冷たく言い放つ。
その声色に心臓はどきりと跳ね、血が冷たくなる感覚に襲われる。
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