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「違っ…!違……俺が勝手に……っ」
慌てて弁解しようとする俺を見て彼は漸く口角を上げ、力一杯抱き締めてくれた。
「ちゃんと帰ってきただろうが。ダメな奴だな」
その声は先程と違って柔らかい。
服越しに彼の体温を感じながら、肩に顔を埋める。いつもの煙草の匂いに混じって血と硝煙の香りがした。
何をしているのか知らないけれど、きっと公には言えないような事なんだろう。
自身も警察である彼には言えないような罪を沢山犯してきた。
だから何となく彼も「そういう」事をしているような気がする。
勿論単なる勘でしかないし、仮にそうだとしてもこの手に抱き締められるのが何よりの幸せでしかない俺にとってはどうでも良かった。
「……ごめんなさい」
「いちいち謝るなって」
彼は少し面倒そうな言い方をしたが、口振りだけなのは分かっている。
朝に帰って来た時は決まっていつもと少し様子が違う。きっと今日もそう。
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