散らぬ期待と提灯花

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​─────── どうしよう。本当に帰ってこないかもしれない。捨てられたかもしれない。 そんな考えが思考を支配する。 拭い去ろうと別の事を考えようとしても、そればかりが脳内をぐるぐると回り、別の事が全く思い付かない。 「……え、あ……嫌だ……」 遂には言葉も勝手に出てくる始末。 動悸が激しくなり、視界が回りそうな感覚に襲われた所で鍵の開く音がした。 足音と違い、鍵は確実に家主の行動だ。 それだけで極限だった身体の不調が一瞬で吹き飛んだ。 先刻とは違う動悸がする。 しかしこの心臓のうるささは嫌いではない。 ドアが開き、家主は朝日を背負った状態で帰宅した。 暗闇に慣れた瞳には朝日は眩しすぎて、待ち焦がれた彼の姿を見る事ができない。 けれど少しでも彼の近くに行きたい。 目を細めながら立ち上がり、駆け寄った。
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