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「んで、お前はどういうので悩んでんだ?取り敢えず教えろよ」  やっとカウンセラーらしい事を話し出したが、話し方は相変わらず国民的アニメの某ガキ大将の様だった。 取り敢えず大戸に今漠然と生きる気力が湧かない事や、友人が居ない事、飲食店のアルバイトで面倒な先輩に目をつけられ「使えない」と毎日怒られ続けた結果、出勤出来なくなり、新しく始める事も怖くなった事。不安症で人付き合いや日常生活に支障をきたしている事や、親や周りの人間は自身の精神状態を理解しようとしない事を話し、他にもつらつらと実体験や言語化が難しい事は抽象的な表現を交えて話した。 「ふーん、成る程ね。まあ辛いのは事実なんだろうけど、今お前は生きてる訳じゃん。なら、それで良いだろ」  詳細に説明した割に、あまりに投げやりな回答をされて頭が沸騰しかけたが、元々そこまでカウンセラーに期待してた訳ではないのでグッと飲み込む。増してや、こいつなら更に期待できないだろう。 「そういう問題じゃない」 「というか、何でお前はそんな状態でここに来たんだ?普通精神科か心療内科が先だろ」 「バイトもしてないから金も無いし、親が精神の病気なんて甘えた理由で金なんて出せないって言うから、ここしか無かった」  そう言うと、大戸は突然笑い声を出し、こう言った。 「なるほど、そういう訳か!ただ、残念だったな。カウンセラーなんてのはな、所詮お前みたいな奴の役に立つ事はない。お前みたいな奴が自己満足の告白をして、俺みたいな奴が自己満足の助言をしてそれで終わり。それだけの関係なんだよ」  余りに正直に言うものだから、かなり驚いたが役に立たない事を自覚しているだけマシか、と思った。 「お前に助言してやれる事はただ一つ。明日もここに来い。見本を見せてやるよ」 「見本?」 「明日の15時な。遅れるなよ」  大戸はそう言い放って、訳もわからず固まっていた俺を椅子から立たせて追い出した。ここに来てまだ一時間も経っていない。随分と長い時間を過ごした気分だった。
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