0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
ライブハウスから、帽子を深くかぶった歩夢と柚斗が出てくる。
その様子を1台のスマホがじっと撮影をしていた。
｢柚斗さん、歩夢さん応援してます！｣
撮影主が2人にそう声をかけると、柚斗が帽子を取りカメラの方へ近付く。
そして溢れんばかりの笑顔で｢ありがとう！｣と返事をする。
そんな柚斗の後ろから少し気だるげそうにやってきた歩夢も少しだけ帽子を上げ｢サンキュー。｣と言う。
時間にして20秒程だろうか。その動画は瞬く間に広がった。
『イケメンすぎる地下アイドル』、『今までなんで知らなかったんだろう…』なんて声がSNS中に溢れた。
それと同時にジーニアスのライブチケットは瞬く間に売れて……
いかなかった。
動画は確かに広がった。
SNSで人気もそれなりに出た。
しかしチケットを買うとなるとそこまで行く人は少ないようだ。
それでも人気が出れば多少は増える。
彼らは諦めずに、ファン目線の動画を出し続けた。
客席に3人しかいないライブハウスは気付けば10人に増えた。
3ヶ月かかって10人に増えれば、半年後には20人に増えた。そうして少しづつ人数を増やしていった。
気付けば初めて動画を投稿した日から3年の月日が経った。
SNSをきっかけに人気を増やした彼らは、今日、夢だった東京ドームの舞台に立つ。
あの時と同じセリフを仁が言う。
｢今日も来てくれてありがとーっ！！｣
きゃああああああ！！！！！
割れんばかりの声援が飛び交う。
彼らは口を揃えて言った。
｢これからも、よろしく！！！！！｣
最初のコメントを投稿しよう！