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その翌日。昨日は泣きすぎてあまり寝付けなかった。一階に降りれば、
「雪美、おはよう。よく眠れた?」
母がいつものように挨拶をしてくる。
『おはよう、母さん』
あれ?口は精一杯動かしているのになぜ声が出ない。どうしてだろうか。
「どうしたの?雪美。なんかいつもと違うわよ。まぁ、妹が亡くなってしまったんだし、無理もないわ。さぁ、朝食にしましょう」
母は心配そうな顔で言った。
どうして気づいてくれないの?私、声が出せてなかったのに。
「あなたも早く食べなさい。遅刻してしまうわよ」
母は自分の部屋でスーツに着替えていた父に声をかける。
「おう。おはよう、雪美」
父は母に呼ばれるとすぐリビングにきた。
『おはよう』
やっぱり声が出ない。これは何かの病気だろうか。だとしたら原因は鈴蘭が亡くなってしまったことしかないだろう。
「大丈夫か?病院行ったほうがいいんじゃないか?」
『その方がいいかも』
私は机の上にあったメモを取ってそこに発したい言葉を書き、父に渡した。
「母さん、俺今日は仕事休む」
「確かにその方がいいわね。雪美、なんかおかしいし、病院に行きましょ」
母の言葉に私は頷き、車に乗って病院へ行った。私の家は車が二台あるおかげで一台事故にあったからって移動が不便になるわけではないのだ。この車も事故に遭えば今度こそ終わりだが。
「失声症です」
着いた病院で医師からそう伝えられた。
人の死や学校でのいじめなどによる大きなショックが原因で声が出せなくなる病気らしい。
治療法は何かのきっかけがあれば自然に直っていくとかって言われた。
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