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第二話
急に足の力が抜けて、もう少しで雪の上に倒れそうになってね。もしかしたら本当に死んでしまうのかなって、薄れゆく意識の片隅でぼんやりと思ったよ。
ああ、やっと、死を迎える人の気持ちが解る、そんな気になった。
そのときなんだ。
凍えそうになる銀世界の中、手を伸ばせば届きそうな距離に、暖かい陽だまりがあった。そこにおれは、ある人を見たんだ。
だれだと思う?
玲ちゃん、きみだよ。
穏やかな笑みを口元に浮かべ、おれに優しいまなざしを向けるきみがいたんだよ。
その途端おれは「こんなところで死んでたまるか」って思った。
きみを残して死んじゃいけない。きみのために生き抜かなければいけない。そう思ったよ。
死を迎えたとき、人は何を見るんだろう。
みんなが見るもの、それはおれには解らない。でもおれの目に映ったのは、玲ちゃん、きみだった。
今ここでおれが死んだら、きみの笑顔が消えてしまう。
泣き顔よりも笑顔がずっと素敵なのに、それをおれが奪ってしまう。だから絶対に死んじゃいけない。そう思ったんだ。
おれはきみの笑顔が好きなんだ。
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