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『いいえ、何度いらっしゃっても無駄でございます』
『そんなこと言って。それなら君の身体に聞いてみようかな』
衣の裾から、ゼウス様の手のひらがスルスルと太ももへ滑り落ちてきました。
その瞬間、頭にカッと血が上ってパシーンっといい音が部屋に響きわたりました。
ゼウス様の頬を思いっきりひっぱたいてしまったようで、つうっと口角からは血が流れ落ちています。
最高神に手を挙げるなんて……。やってしまったと言う思いはあるものの、後悔はしておりません。絶対、絶対、絶対に、夫以外の者にわたくしの身体をあげてなるものですか!
流石にお怒りになるかもしれない。とゼウス様を見上げると、口元の血をペロりと舐めとって予想外にも微笑まれました。
『ふふっ、ヘラは堅いねぇ。そこがまたいいんだけどさ』
ベッドに押し倒されそうになるくらいまで、再び迫ってきていたゼウス様をグイッと押し退けて立ち上がると、ため息混じりにゼウス様がおっしゃいました。
『困ったなぁ、ヘラ。どうしたら美しい君をモノに出来るのか教えてくれないかい?』
『お教えするまでも御座いません。妻がいる殿方とは絶対に関係を持ったり致しません。わたくしがこの身体を捧げるのは誰がなんと言おうと、このヘラの夫だけと決めているのです!』
ピシャリと言い放ったわたくしの言葉に何かを閃いたのか、ゼウス様はポンッと両手を叩きました。
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