この人は

　それからね、私は、この男性の亡くなり方も不思議に思えるのですよねえ。
　直接的な死因は、毒なんです。だというのに、体のあちこちに刃物による損傷がありまして。

　相当、誰かに恨まれていたように見えるのですよ。でもこれまた奇妙なことに、お洋服はちゃんとしていましてね。
　彼女の家にお家デートしている途中のような、ちょっとゆるい感じの服装でした。

　あとね、それから･･････

　おや、どうしたのです。そんなに怯えて。寒いでしょう、暖炉から離れなくたっていいじゃありませんか。ほら、もっとお寄りなさいな。

　ふふふ、何も怖くありませんよ。うん、なんです？どうしてそんなに、亡くなった方の肖像画ばかり持っているのかって。
　ああ、そうですか。確かにそう見えますけれども、違いますよ？

　別に私は──死神ではありませんよ。