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川上 恵愛
高校一年生になった恵愛は、
「川上さんっ……良かったら、連絡先教えてください!」
同じクラスや、他のクラスの男子から、そんな声をかけられることがますます増えていた。
「うん。いいよ」
さらりと応えながら、前下がりのボブヘアの左側の髪を右手で左耳へとかけるその姿は、
「川上さんって、何か色っぺぇ!」
周囲の男子たちをざわめかせ、
「何あれー」
「お高く止まってるけど、来るもの拒まずでビッチ丸出しじゃーん」
他の女子生徒たちを妬ませた。
そんな中で、
「……」
大注目を浴びている恵愛には目もくれずに、読書に集中している男子が一名。
恵愛のすぐ左隣の席の、市川 右京。
入学して早々、校内一の美男子だの、高嶺の花だのと騒がれている少年で、
(いつ見ても、綺麗な顔……)
美人だと騒がれることの多い恵愛ですらも、思わず見惚れてしまうほど。
「ねぇ、市川くん。隣の席になれたのも何かの縁だし、連絡先交換しない?」
何か口実を作ってでも、彼との関わりが欲しいと思った。
恵愛に差し出されたスマホを、少しだけ顔をこちらに向けてちらりと確認した右京は、
「……いい。交換したって、やり取りする気なんてないし」
ぼそりと呟くようにして答えると、また読みかけの本へと視線を戻す。
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