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着替え終わって鏡の前に立ち、マントに身を包んでポーズをとる。背後で、ほぅと、ため息がもれた。
「わお、完璧。さすが芸能人は華やかさがちがうわ」
腕組みして満足げにうなずいているのは、高遠悠だ。
学生時代の友人で、今は大学で助手をする傍ら、映画を作っている。
「セクシーなドラキュラ伯爵の出来上がりだい。
いやあ、かっこいい。ベラ・ルゴシやフランク・ランジェラも真っ青だ。おれのイメージそのままだよぉ」
悠が口にしたのは、往年のドラキュラ俳優の名前らしい。
マニアックすぎて哲哉には具体的なイメージが浮かばなかった。すると、参考にした俳優の写真を数枚見せてくれた。
「な、完璧だろ」
悠がウインクする。哲哉は力強くうなずいた。
「ところで悠はどんな仮装するんだ?」
「おれはいい。ビジュアルよくないし。あちこちぜい肉がつき始めてるから、下手に仮装したら哲哉の引き立て役になるよぉ」
着替えやメイク落としの小道具を鞄に詰め込みながら、悠が答えた。
「おれひとりが仮装して歩くのか。いくらハロウィン・ナイトでもなぁ」
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