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「アマチュアだから、特殊メイクも自分たちでやってんだ。こんなところで役立つとは思わなかったけどな」
と言いながら、悠は指で枠を作り、そこから哲哉の姿を覗き込んでいる。
「やっぱ芸能人はちがうわ。かっこいいねぇ。今度おれの映画に主役で出ないかい?」
「ホラー映画だろ。勘弁してくれよ。ゾンビに追いかけられて悲鳴あげてたら、のどを潰しちまうじゃないか」
「なんだよー。おれたちが撮ってるのは、ストーリー性のある、スタイリッシュな作品ばかりだい。哲哉が主役でもおかしくないような――」
ロックスターを使ったホラー映画だってあるんだぞ、デビッド・ボウイとか、などと悠の蘊蓄が始まった。
マニアックな話にはついていけない。コーヒーを飲みながら、半分も理解できない悠の話を、黙って聞く。いつもこのパターンだ。
だが哲哉はこういう時間が好きだ。ちがう分野の人たちの話は、自分の音楽の幅を広げてくれる。
なのでふたりは、卒業後もたびたび会っていた。
「久しぶりにキャンパスも歩いてみないかい」
「この格好で?」
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