第二話 懐かしいキャンパスで

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第二話 懐かしいキャンパスで

 肌をかすめる風は、ほんの少し冷たさを感じさせる。雲ひとつない秋晴れのさわやかな昼下がりだ。  キャンパスのメインストリートに植えられた銀杏(いちょう)の木は、まだ色づいていない。  今年は夏が長かったためか、気温が平年並みになっただけで、急に季節が進んだような気になる。  学内は、まもなく開催される学園祭にむけて、どこもにぎやかだった。  個性的な立て看板がところ狭しと並んでいる。クラス単位の企画もあれば、サークル単位の企画もある。  派手なものから地味なものまでバラエティーに富み、見ているだけでも楽しい。 「高遠監督の最新作は、学園祭に間に合いそう?」 「学生たちと一緒に、必死で作ってるところだよ。今は編集作業をやらせてるんだ」  悠は映画サークルのOBで、今は顧問をしている。 「上映日までに完成しそうか?」 「なんとかなるよ。できなかったときは、笑ってごまかす予定にしてんだ」 「そんなことしたら、学生がレポート遅れても、叱れなくなるぜ」 「げ、それはヤバい」  他愛のない会話を交わしながら、キャンパスのメインストリートを歩く。
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