第二話 懐かしいキャンパスで

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 自分の作った曲を目の前で演奏されて、哲哉は気恥ずかしいような、それでいて誇らしげな気持ちになっていた。  学園祭にむけて、CMをかねたゲリラライブをしているのだろう。  二人は本当に楽しそうだ。演奏することも楽しければ、聞いてもらうことも楽しい。  アマチュア時代の自分も、あんなふうに音楽を楽しんでいた。  もちろん今だって、曲を作ることも歌うことも楽しい。  でも疑問を感じることもある。  スケジュールにあわせて無理やりひねり出す曲作りが、本当に楽しいだろうか。  自分の求める世界と、ファンの聴きたいものはあっているだろうか。  作りたいものをおさえ、うけそうなものに走ってはいないか。  わいてくるネガティブな考えにとりつかれ、ここ半月はアイディアも浮かんでいなかった。  そんなとき悠からハロウィン・パーティーのことを聞かされ、気分転換になればいいなと引き受けた。  期待どおりの結果が得られる保証はないが。  哲哉は観衆の輪に加わり、後輩の演奏に耳を傾けた。この曲はファーストアルバムに入っている。  哲哉たちも、昔はしょっちゅうゲリラライブをしていた。
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