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第27話 さて、そろそろ罪を贖ってもらおうか(2)
チャール伯爵から招待状を受け取ったルセック伯爵と伯爵夫人が、ようやく重い腰を上げて恐る恐る王宮に向かったのがその数日後。
王宮へ向かうとすでに待っていたかのように衛兵がこちらに、という様子で案内をする。
そして二人が連れて来られたのは、なんと並の貴族では到底足を踏み入れることのできない、謁見の間であった。
「「──っ!!」」
そこにはすでにレオンハルトとコルネリアが玉座下の横に控えており、ルセック伯爵夫妻との久々の再会となった。
二人の様子を見てさらに居心地の悪そうな表情を浮かべるルセック伯爵と夫人は、そっと案内された場所に立つ。
すると、そこに堂々とした出で立ちで国王があらわれると、レオンハルトたち、その場にいた皆が一斉に恭しく礼をする。
国王はそれらを一瞥して玉座に着くと、話を始める。
「ルセック伯爵、ならびに伯爵夫人。ここに呼び出された理由はわかるな」
「は、はい……」
ルセック伯爵は事前の招待状という名の勧告書によって、コルネリアへの虐待についてを咎められることを知っていた。
そしてそれを受けて他国へ亡命しようとしたのだが、なんと使用人であったメイドによって隠し金庫に入れていた財産を全て奪われており、どうすることもできなかったのだ。
さらに悪いことに亡命しようとした動きを王国の影であるリュディーに調べられ、それを王国に報告されていた。
「何か申し開きはあるか?」
「いえ……」
だらだらと汗が流れ落ちており、どのような処遇を言い渡されるのか恐怖心で溢れているルセック伯爵、そして納得がいかないというような表情を浮かべる伯爵夫人がいる。
義理とはいえ、自分の父親と母親である彼らを、コルネリアは悲しい目で見つめていた。
そうだ、この人たちは罪を償わなければならない。
「コルネリアを商売道具として扱った上に、用なしと感じるや否や酷い扱い環境下で生活をさせた。まずこれ自体が虐待罪にあたる、わかるな?」
「……」
「さらに、君を調べるうちにどんどん悪いものが出てきたよ」
国王がレオンハルトに目を遣ると、私が代わりに話しますと言った様子で資料を片手に話し始めた。
「ルセック伯爵、お久しぶりですね。コルネリアを虐待していた罪、私は許しませんよ?」
「ひいっ!」
いつもとは明らかに違う低い声と様子、そして表情を横目で見て、コルネリアは驚く。
「それに、実はあなたを調べていたら、多くの罪が出てきましてね、その一つがフィードル伯爵家の没落の原因となった貿易不正。あれは、あなたが裏で糸を引いていましたね?」
「……知りません」
「しらを切っても無駄ですよ。ある人物から不正に関する証拠の資料、帳簿、全ていただきましたから」
「なっ?!」
束になった証拠資料を掲げてルセック伯爵に突きつけながらレオンハルトは言う。
「あなたの家の財産を盗んだメイド、なんのために盗んでいたか知っていますか? ……復讐ですよ、あなたへの」
「復讐?」
「彼女はもともとフィードル伯爵家で最後まで雇われていたメイド。フィードル伯爵夫妻が命を絶った後もその娘であるご令嬢に仕えていたメイドですよ」
「──っ!!」
「主人であるフィードル伯爵夫妻のため、そしてそのご令嬢であるテレーゼ嬢のために、あなたの財産を奪ったんです」
そう、全ては自分の蒔いた種であり、それが返ってきた。
因果応報という、それだけの話であった。
もちろん盗み自体は良くないのだが、証拠も不十分、そして今回ルセック伯爵の不正資料も一緒に提出をして自首をしたため、おそらく彼女は不起訴となるだろうとのことだった。
「さあ、私の大事な妻への酷い仕打ち、暴力、そして国への反逆、その他不正行為の数々……ここまで揃うのも珍しいですね。さあ、国王いかに裁きましょうか?」
もはやルセック伯爵は言い訳できないと言った様子で観念しているが、その横でピーピーと伯爵夫人は騒ぎ立てている。
「これは全て夫がしたことですわっ! わたくしは何も悪くありませんもの! 裁くなら夫だけをさば……」
「黙れ」
「ひぃっ!!」
国王の威厳のある低い声、そしてその圧力に負けて夫人は腰が引けている。
先ほどまでの威勢はどこへやらと言った様子で、何も言えずにわなわなと震えていた。
まるで、怪物を見ているがごとく──
「ルセック伯爵ならびに、伯爵夫人両名は、国家に対して、そして大事なこの国の民に対して信頼を損ない行動を起こした。よって、法によって裁きを下す」
国王は玉座から立ち上がって右手を掲げ、こう宣言した。
「ルセック伯爵の爵位はく奪、ならびに領地領民の返却、そして両名を国外永久追放とする!」
「そんな……」
「うそでしょ……」
ルセック伯爵と伯爵夫人はその場に今度こそ力なくへたり込み、頭を抱えて泣き叫んだ。
そんな様子をなんとも悲し気な表情で眺めているコルネリアは、その後レオンハルトの進言によって彼らから正式な謝罪をもらった。
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